悪質なデマに引っかかる池上彰氏。氏に知識人としての資質はあるのか

池上 彰氏

池上 彰氏

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中国事故死亡者35人説

先日の中国・天津での大爆発事故に絡み、ネット上で話題になったデマの一つとして、「中国事故死亡者35人説」というものがある。

これは、中国で起きた惨事においては、必ずといっていいほど死亡者数が35人を上回らない、または多くの事故において死者数が35人として記録されているというものだ。

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天津大爆発の風景

実際のところ、この話自体は全くもって根も葉もない話である。リンク先を見ればわかるように死亡者数が35人を超えて記録されている事故は数多くある。

すなわち、これは事実上の一党独裁である中国共産党体制、そしてそれによる全体主義を揶揄するために生み出された数多くのアネクドート(風刺)の一つであるにすぎない。

社会主義国家はその窮屈さがそうさせるのか、このような政治風刺が数多く存在する。旧ソビエト連邦という国は紛れもなく東側陣営の大国であるが、同時に風刺大国でもあった。

A:「ソ連にもアメリカのような言論の自由があるって本当ですか?」

B:「ええ、原則としてその通りです。ワシントンD.C.のホワイトハウスの前で『くたばれ、レーガン!』って叫んでも罰せられないのと全く同じように、モスクワの赤の広場の前で『くたばれ、レーガン!』って叫んでも罰せられません」

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赤の広場

時が流れソ連は瓦解、歴史上の存在となってしまったのと比して、中華人民共和国は未だ存在している。そのためデマは今日も生まれ続ける。

デマに引っかかった意外な人物

ところでこの「中国事故死亡者35人説」、以前どこかで聞いたことがあるなと思っていたら、あの著名人がテレビで堂々と口にしていた。池上彰氏である。

該当の発言は2011年にBSジャパンで放送された「池上彰の現代史講義 第10回 中国・大躍進政策と文化大革命」で口にしている。番組は氏が信州大学で行った講義を元にしたものだ。YouTubeにも動画があり、確認できる。

https://youtu.be/NyUmY-JIxks?t=4m4s

池上氏:

「35人。という死者がですね、不思議な数字だということが言われていますね。中国ではこれまで様々な事故で、例えば炭鉱事故ですとか、いろんな事故が各地で発生しています。この死者がなぜかみんな35人なんですね。中国の事故を35人というキーワードで検索すると、事故情報が続々と出てくる。なぜかみんな死者の数が35人。どういうことだろうか。」

「そもそも“3”という数字ですと中国で言うと『沢山』という意味があるので、取り敢えず、まあ大勢たくさんの人が亡くなったんだよ、というのを35という数字で表しているのではないか、という説もあるんですが、よくわからないんですが。」

「つまり、正確な死者の数をきちんと数え、それをきちんと国民に発表するという仕組みがないものですから、まあ取り敢えず35人という数字にして発表しておこう、ということになっているのではないか、という疑惑があります。」

「検証出来ないんですね。本当のところ分からないから。でも、各地で起きている様々な事故の死者が、みんな35人というのは、あまりになんか偶然の一致にしては多すぎるでしょうと、いうことです。」

「今回の中国高速鉄道事故も、本当のところ、何人が亡くなり、何人がけがをしたのかが実はよくわかっていなかったりします。そもそもこういう事故が起きて、事故処理をして、もう生存者はいないから車両を全部解体するって言って車両を解体していたら、車内から乳児が生きたまま見つかったと、いうことがありますね。ちょっとでも発見が遅れていれば、そもそもどうなっていたか、ということがあります。」

「どうしてこんなことが起きるのか。鉄道省ですから国の役所ですよね、そういう国の行政をチェックする組織がない。あるいはキチンと報道し、国民の前でそれを検証するシステムが整っていない。ということなんですね。」

繰り返すが中国事故死亡者35人説はデマである。もちろん人間なので、誰でも事実誤認というのはあるのだが、少し調べればこの話がデマだというのはすぐにわかったはずだし、何よりも今回の発言は大学の講義での発言。あらかじめ正確性を確認しておくのが筋というものではなかったのか。

池上氏は動画中、まともな民主主義が存在せず報道機関のチェック機能がまともに働いていない中国の政治体制へと話をミスリードさせているが、それは事実と異なっている。

もちろん中国の共産党一党独裁がろくでもないものであることは自明である。しかし、だからといって間違った情報を伝え、話をミスリードさせて良いはずがない。

最近、どうも池上氏の発言には首をかしげるものが多い。

少し前、フジテレビ「池上彰緊急スペシャル!知ってるようで知らない韓国のナゾ」の韓国市民の日本語テロップの捏造が取り沙汰されたが、あの番組がテロップのみならず中身も事実に即さない、デタラメそのものであったことはWebサイトLitera(リテラ)がすでに報じた通りである。

またテレビ朝日「池上彰のニュースそうだったのか」においても「太平洋戦争は自衛戦争」「砂川判決によって自衛隊は合憲になった」「慰安婦問題は日韓基本条約で解決」など、事実認識としてどうだろうということを主張している。

それだけではない。報道者としての姿勢にも疑問が残る。7月25日のテレビ朝日「池上彰のニュースそうだったのか」では東京裁判を扱ったが、番組は東京裁判の不当さを指摘する内容に終始していた。

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確かに、東京裁判が戦勝国による断罪的な性格を帯び、公正性という点において問題があったという氏の指摘に間違いはないだろう。

しかしながら、裁判の問題点ばかり論じ、裁判の途上提出された資料によって明らかになった日本の戦争犯罪の深刻性、あるいは日本が裁判の結果に承服することによって国際社会に復帰した事実などを無視して報道する点にはどうも疑問符が付く。

氏は2011年、「ジャーナリスト宣言」を行ない、それまで出ていたテレビ・ラジオの一切のレギュラーから降板した。そんな氏も、最近では再びマスコミでの活躍が目覚ましい。

思うに、忙しすぎてインプットが足りてないのではないか。公正中立というジャーナリストとしての立場を度々強調する氏だが、もう一度、原点に立ち返り、正確な事実の把握と報道に努めるべきではないのか。

「週刊子どもニュース」を見て育ち、現在も氏の著作の一読者・一ファンである身としては、僭越ながらそんなことを思うわけである…。

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