イギリスのEU離脱 / Brexitに関して知っておきたい14のデータ。グローバル経済苦境のスケープゴートとしての「反移民・反EU」

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イギリスのEU離脱/Brexitに関して知っておきたい14のデータ

イギリスのEU離脱ウンヌンの話ですが、どのようにして今回の結果となったのでしょうか。残留離脱支持層や多数派となった離脱支持層の背景にある社会的事情を調べてみると、興味深い事実が浮かび上がってきます。

①:誰がEU残留/離脱を望んでいたのか

【EU残留支持層】

  • ガーディアン (リベラル系新聞) 読者
  • 緑の党/自民党/労働党 (いずれも左派) 支持者
  • 18-39歳
  • 大卒者
  • アイルランド/スコットランド/ロンドン在住者
  • 上流中流階層

【EU離脱支持層】

  • UKIP (極右) 支持層
  • 保守党 (右派) 支持層
  • サン/デイリーメール/エクスプレスなどタブロイド新聞読者
  • 60代以上
  • 中下流・下流階層

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via:Financial Times

・タブロイド新聞「ザ・サン」での、EU離脱をうながす記事

某極東国家の「わが代表堂々退場す」をほうふつとさせる、ナショナリズムが全面に押し出された実に意気揚々とした紙面。

訳すと「俺は大英帝国を信じている!さあ、EUを脱退しようぜ!」みたいな感じ?

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via:The Sun

②:EU離脱派の主張 その1「EU加盟が経済的に足かせ」は本当か

⇒イギリスのEU予算への拠出額は、EU28か国中4位 (上図) 。だが、人口一人当たりで見ると、額はそれほど多いわけではない (下図)

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via:日本経済新聞

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via:Financial Times

③:そもそもEUへの拠出金は、イギリス予算のうちで1%ほどしか占めていない

現在イギリスで勢力を拡大している極右政党UKIP (英国独立党) は「EU拠出金をNHS(国民皆保険)や教育の財源に回す」とうたっていたが、EU国民投票後、早くもこれを撤回した。

そもそも、EU拠出金はイギリス予算のうちで1.2%しか占めておらず、福祉や社会保障、教育予算とは額に大きな開きがある。

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via:Financial Times

④:移民増加への恐怖

⇒近年EUが東ヨーロッパにも拡大するにあたり、豊かでない国がEUに含まれるようになった。

これはすなわち、イギリスなど豊かなEU諸国への移民の増大を意味する。

・EU諸国での一人当たりGDP (単位:1000ドル)

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via:Financial Times

⑤:EU離脱派の主張 その2「移民の増加による悪影響」は本当か

⇒移民が現地の人々の失業や賃金の低下を招くようなことはない

「移民が仕事を奪う」「移民流入により人々の賃金低下が起こる」。これは多くの人々の間で半ば”常識”となっていることだが、これらをサポートする実証結果は、実のところ無い。

例えばレイチェル・フリードバーグ氏とジェニファー・ハント氏の1995年の研究によれば、移民の流入と移民先の人々の失業率上昇に相関関係は無かったし、また賃金低下についても同様だった。

⑥:むしろ移民を受け入れないと、イギリスは今後、大規模な少子高齢化が起こる

移民を全く受け入れなかった場合 (左) と、受け入れた場合 (右) のシミュレーション。

まずは現在の状況である2014年。

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一方、こちらは2039年のシミュレーション。受けいれない場合 (左) は極端な少子高齢化・生産人口の減少が起こり、移民を受け入れて (右) ようやく、現在の人口構成比が保たれることが分かる。

なぜ人口減少が問題となるのか➾それは、人口増加は経済成長において重要だかから。

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・経済成長に関連するページ:

なぜ世界各国には、大学奨学金があるのか。ある一面への回答 以前紹介した「日本以外の国には、まとまな奨学金制度が存在している(日本の...

⑦:「EU離脱に投票した人=先進国低所得労働者」の現状

⇒経済的苦境へのスケープゴートとしての「反EU」「反移民」?

下のグラフは1988年から2008年における人々の実所得の伸びを示したもの。

意外な話だが、実のところグローバル経済は世界の多くの人々の経済状況を改善させている (だから、1日1ドルほどで暮らさないといけない「絶対的貧困者」の数は、ここ数十年で世界的に減った)。

ただ、その中で”一人負け”の階層があって、世界での収入ランクにおいて90番目から75番目の階層がそれ。ちょうど先進国の低所得者層に当たり、この階層の人々はここ20年、グローバル化の”恩恵”を全く受けていない (だから、先進国各国で格差社会が問題になる)。

今回のイギリス国民投票で「EU離脱」に票を入れた低所得者層も、この層に当てはまる。

また「グローバル経済で多くの人々の経済状況が改善」といっても、先進国だけでなく世界的に見ても格差そのものは拡大している。

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via:Washington Post

⑧:EUへの輸出と投票先

⇒EU圏内へのGDP依存率が高い(貿易が盛んな)地域ほど、EU離脱の投票者が多く占めている。

「⑨:イギリスの輸出先」と合わせて考えるに、EUからの離脱は貿易からの離脱を意味するようなものだけど…。

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via:Financial Times

⑨:イギリスの輸出先

⇒EUがトップで半分以上を占める

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via:Statista

⑩:大卒者の地域居住率と残留/離脱

⇒大卒者が多く占める地域ほど、EU残留に投票した人が多かった

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via:Financial Times

⑪:専門職(金持ち)が多く住む地域ほど、EU残留を求める声が大きい

専門職・・・医師や弁護士、司法書士や薬剤師などの「士」業、またはSTEM (理系) 博士号取得者など。要するに金持ち。

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via:Financial Times

⑫:年齢層別、残留/離脱支持について

⇒高年齢層ほど離脱を求める声が大きい

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via:BBC

⑬:若者が多く占める地域ほど、投票率(Turnout)が低かった

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via:BBC

⑭:イギリスのEU離脱には、今後さらに4ステップが必要

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via:BBC

参考文献

日本経済新聞「EUへの英の貢献は 予算の1割拠出」2016年6月21日

Financial Times.com ”Brexit: voter turnout by age”

Financial Times.com ”The UK in Europe: a visual guide to Brexit”

BBC.com ”EU referendum: The result in maps and charts”

Statista ”Britain’s exports: what are they and where do they go?”

Friedberg, Rachel M., and Jennifer Hunt. 1995. “The Impact of Immigrants on Host Country Wages, Employment and Growth.” Journal of Economic Perspectives 9(2): 23 -44.

The Washington Post ”The world’s losers are revolting, and Brexit is only the beginning”

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