【映画レビュー】続編公開記念『トレインスポッティング』とは何だったのか。ポップさの中にあるダークさの所以・レディオヘッドとの共通点・先進国の若者に共通する経済苦境

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【映画評】『T2:トレインスポッティング』公開記念、『トレインスポッティング』とは何だったのか

1996年に公開され全世界で大ヒットしたイギリス映画『トレインスポッティング』の続編が、『T2:トレインスポッティング』として2017年春に公開されます。

https://www.youtube.com/watch?v=uarjuAHhkxc

トレインスポッティングと言えば、サウンドトラックとして用いられたアンダーワールド「ボーン・スリッピー」ともども大流行し、高い評価を得ました。一体どうして評価されたのでしょうか。その背景に探っていきます。

映画情報:

タイトル:『トレインスポッティング』

公開:1996年イギリス

監督:ダニー・ボイル

出演:ユアン・マクレガー、ユエン・ブレムナー、ジョニー・リー・ミラーなど

・あらすじ:90年代のスコットランド

イギリスはスコットランドにいるマーク・レントンと仲間たちは、いつもハイになってるか、ドラッグを買うため盗みをしているかだ。

アル中で喧嘩が趣味のベグビー。女たらしで”007オタク”のシック・ボーイ。気のいい小心者のスパッド。

そして、なんでもOKの女子中学生ダイアン。そんな彼らの友情もやがて崩壊の運命をたどる。

圧倒的な絶望感の中、人生を変える賭けに出るレントン。彼はどんな未来を選ぶのか。

・『トレインスポッティング』の舞台背景、解説

①:若者特有のノーテンキさ・ポップさを、巧みな映像で表現した青春映画

https://youtu.be/eMC68qlZnKg

映画の舞台は1990年代前半、イギリス・スコットランド。ユアン・マクレガー演じるレントンとその仲間たちが日常において送る、バカ騒ぎを描いた青春映画が本作。

イギー・ポップの音楽に乗せて、レントンたちが街を駆け回るシーンから始まるこの映画は、全編を通して、若者らしい快活さと陽気さ、明朗さが画面から溢れています。

この明るさ・ポップさは時としてオーバーに表現されることもあり、例えばガラス張り・鏡面張りのロッカーケースが登場するなど、若者のキラキラ感を表現するため随所に面白い表現が見られます

②:現代日本社会の若者にもつながる、背景にある経済苦境

・映画が時折見せる陰鬱なトーンの背景にある、スコットランドの経済苦境

しかしながら、全体的にキッチュでポップなシーンが流れるにもかかわらず、作中では時折、どことなく歪(いびつ)で暗いトーンが見え隠れします。

そもそもにおいてレントンたちが日々バカ騒ぎをやっているのは、それは仕事が無く、ほかにやることがないことによるもの。

作中においては、90年代のイギリス地方によく見られた、経済不況がもたらす陰鬱な様子を垣間見ることができ、それがポップな映像表現とのあいだでのアンビバレンツな不安定さを生み出しています。

考えてみれば、このようなイギリス地方経済の苦境は80年代から生じたものでした。

具体的に時代背景を辿れば、

  • 80年代から始まるニューエコノミー(サービス産業中心)への産業構造の転換
  • ないし、時のサッチャー保守党政権の労働組合弾圧

などが重なり、ロンドンなど中央都市が活況を迎える一方で、炭鉱や造船の地域として栄えていたスコットランドや、その主要都市グラスゴーなど地方都市の経済状況は、もはや壊滅的といえる状況になっていました。

当時、スコットランドの失業率は9~10%ほど。若者に至っては20%を超えており、それは今も続いています。

日本で言えば、沖縄のような政治的にも経済的にも不安定な立ち位置にあるスコットランド。そのような世界の下、レントンとその仲間たちは、まともな職にありつけず、日々何もすることがなく、仲間達とドラッグや憂さ晴らしの軽犯罪行為、フリーSEXといったことしかやることがありません。

・レディオヘッド『Ok Computer』との共通性

なお『トレインスポッティング』と同じ時期、世界的に大ヒットしたイギリス発のCDアルバムンとして、レディオヘッドのCDアルバム『Ok Computer』があります。これも全編を通して陰鬱な様相を呈しており、批評家たちからは「90年代の英国病を巧みに表現した」などとして絶賛されました。

アルバムの中の1曲、『No Surprises』などは、鉄琴(グロッケンシュピール)を主体にした爽やかな編曲にあわせて希死念慮をつづった歌詞が歌われ、本作トレインスポッティングの手法との共通点が見て取れます。

・Radiohead-No Suprises

https://youtu.be/u5CVsCnxyXg

③:「普通のくらし」が営めなくなった先進国の若者と、スコットランドの独立運動

物語の終盤、怠惰な生活にうんざりしたレントンは、人生の一発逆転のため、仲間を裏切って彼らの財産を奪おうとします。

そのシーンにおいて、挿入されるモノローグ(独白)が次のモノ

人生に何を望む?

出世・家族・大型テレビ・洗濯機・車・CDプレイヤー・健康・低コレステロール・保険・固定金利の住宅ローン・マイホーム・友達・ローンで買う高級のスーツ・単なる暇つぶしの日曜大工・くだらないクイズ番組・ジャンクフード・腐った体をさらすだけのみじめな老後。

それが豊かな人生。

日々喧騒を極める現代の消費文明に対し、そのバカバカしさや虚しさ・くだらなさを理解しつつも、それすら営めない自分の貧しさに嫌気がさし、「普通の人生=バカバカしい消費文明」へのあこがれを口にするレントン。

結局彼の場合、仲間たちを裏切ることで「普通の人生」へのきっかけをつかむのですが、しかし現実のスコットランドの若者の場合、そう都合良い話が回ってくることはありませんでした。

現実世界において、トニー・ブレア率いる労働党が政権を奪還したのが1997年。

そしていわゆる「第3の道」政策により、イギリスの経済は好転し、若者の雇用もある程度は改善するも、スコットランドの若者の苦境を変えるまでには至ってません。90年代に比べ、同地域の失業率は低下したものの未だ高く、若者に限れば15%近くもあります。

出典:eurostat

暗転したままの現状を変えようとの意識が結果として、昨今のスコットランド独立騒動、そして英国EU脱退につながっていったのは、言うまでもありません。

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