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【なるほどインディー】カフカ文学のように組織の不条理さを嗤う「Grimsfield(グリムスフィールド)」

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現代社会を覆う「組織」の不条理さを描くアドベンチャー『Grimsfield(グリムスフィールド)』

最近シーンに登場した、メジャー作品にはない尖ったセンスやケレンミを放つインディーゲームや、忘れ去られていった過去のゲーム関連機器・サービスを紹介していく連載コーナー「なるほどインディーゲーム&マニアックス」。今回ようやく連載5回目。直近2回の記事はコチラ。

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第3回:旧ソビエトの地方指導者となって人民を恐怖でコントロールし、5か年計画を達成しよう。ソ連版シムシティ『Soviet City』

第4回:精神セラピストが贈る、死とどう折り合いをつけていくかがテーマの実存主義RPG『To Ash』

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さて今回お届けするのはPCでの提供が予定されている『Grimsfield(グリムスフィールド)』。イギリス・ロンドンに住むアニメーター、アダム・ウェルズ氏が贈る短編作品。ゲームはクリック方式のオーソドックスなタイプのアドベンチャーゲームスタイルで進められていく。

パッと見たさいのモノトーンなグラフィックが印象的だが、作者曰く、このゲームは「カフカ小説風の作品である」とのこと。

カフカといえば『城』『審判』『変身』などの作品で知られているが、これら作品に通底するのは「不条理」というテーマ。それに加えてこれはカフカが元々役人だったところもあるせいか、同じく不条理さをモチーフとする作家に比べ、官僚制が人間の個性を奪う疎外性、あるいは人間のために作られた組織やルールが逆に人間を縛る隷属性といった点が強調されていることが多い。『審判』は、ある日無実の罪で訴えられた主人公が立ち回りもむなしく、最後は無残に処刑されていくことを描いた物語。一方の『城』は、矛盾だらけの「城」の行政システムに翻弄される主人公の、自身のアイデンティティーを失っていく過程を描いた物語。

ここでいう「官僚制」とは日本のエライ役人のことではなく、権限・階層・専門性が分化された集団の管理方法のことであり、要するに現代のどの「組織」にも見られる支配システムのことを指している。国家権力から会社組織まで、現代社会で人々は多層的にさまざまな官僚制の下に置かれている。

現代社会を覆う官僚制の狂気について、例えばカフカは次のように語る。

「人は都市の街路を仕事場に向かって行進します。飼養桶と満足感に向かって。それはちょうど役所におけるように、一分の狂いもなく計測された生活である。奇蹟というものはなく、正確な使用説明書と、書式と訓令の世界です。人間は自由と責任を恐れ、それ故にむしろ自分ででっち上げた鉄格子の中に窒息することを、よしとするのです」(グスタフ・ヤノーホ『カフカとの対話』ちくま学芸文庫)

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さてプレーヤーはゲーム中、主人公の詩人としてビートニクのクラブを立ち上げていくことになる。

(ビートニクとは1950年代にアメリカを中心に流行した芸術運動のことで、当時の頑迷なキリスト教社会の常識や道徳、制度など反抗して新しい人間のありかを見つけようとした。のちの60年代の反体制運動のきっかけとなったことでも知られている。)

そしてクラブを立ち上げていく中で、がんじがらめのルールが支配する官僚制と立ち向こうことになり…というストーリー。まだ多くの情報が公開されているわけではなく、どのようなゲームになるのかまだ詳しくはわからないが、とはいえ興味ひかれる1本になりそうだ。

・ゲーム情報

タイトル:『Grimsfield(グリムスフィールド)』

ジャンル:アドベンチャー

価格:未定(”安い”と作者)

機種:Windows

対応言語:英語

発売日:2016年Q1(1月~3月)

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