格差が貧困以外にも影響を及ぼすものがわかる10グラフ。寿命・学力IQ・経済成長・労働資源の無駄・健康

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格差が貧困以外にも影響を及ぼすものがわかる10グラフ。寿命・学力IQ・経済成長・労働力の無駄・健康

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by Montecruz Foto

格差社会が叫ばれて久しく、日本でも貧富の格差は拡大傾向にあることはよく知られたところ。また、「格差」といえば思いつくのはまず経済的なものですが、それ以外にもさまざまな要素、寿命や健康、学力などにも影響が及ぶことが近年の研究で明らかになっています。

格差や貧困と言えば、とかく叫ばれやすいのが「自己責任」。しかし格差の放置は社会の労働力を無駄に使いつくし、国家全体の経済成長を損なうなど社会全体にも関係することなども明らかになっており、社会厚生の観点からすれば「自己責任」でみなすことが早計であることも分かります。

今回はそんなグラフの紹介。

①:収入と平均余命の関係;金持ちほど長く生きられる

これはスタンフォード大学のラジ・チェティ教授らによる研究。

グラフは40歳以上の人の平均余命と収入の関係。縦軸が平均余命(70や85といった数字は年齢)、横軸は家計収入のパーセンタイル(収入を小さいほうから順番に並べ、何パーセント目にあたるかを示したもの;例えば”20”の位置にある人は、収入が下位20%にある人のことを指す)。

やはり基本的に収入が多いほど平均余命が高く、収入が最下位層の人と最上位層の人びととの間では、男性で15年、女性で10年ほど余命に差があります

出典:https://healthinequality.org/

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②:貧しい人ほど、豊かな地域に暮らすか貧しい地域に暮らすかで寿命に差が出る

これも上と同じくチェティ教授らによる研究。

・金融業で豊かなニューヨーク

・シリコンバレーが近く、コンピュータ系企業を多数擁するサンフランシスコ

・カウボーイ文化が根強い南部の田舎だけど、金融業が発達し、豊かなテキサス州首都ダラス

・自動車産業が衰退して立ちいかなくなったデトロイト

これらの各都市の人びとの40歳時の平均余命を比較すると、豊かでない都市ほど貧困層で平均余命に差が出ます

具体的にはニューヨークの最貧困層とデトロイトの最貧困層では、6~7年ほどの平均余命の差があります。一方、中流~豊かな階層はどこに住んでもそれほど余命に差は出ません。

出典:https://healthinequality.org/

・崩壊都市デトロイトのようす

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デトロイトの雰囲気を知るには

ダラスの雰囲気を知るには(ただし80~90年代)

③:格差が大きい国ほど「守衛仕事」に就く人が多く、労働力のロスが起こる

これはラディカル経済学(経済学にマルクスの視点を導入するも、マルクス経済学と異なり数学を用いた分析的で実証的な研究スタイルが特徴)のサミュエル=ボウルズらの研究によるもの。

ボウルズ氏によれば、格差が激しい国ほど人の資産を守る「守衛仕事」に就くひとが多く、結果として労働力の無駄を生むことになるといいます。

「守衛仕事」には、文字通り守衛や警備など体を張って人の資産を守る仕事からネット上の違法画像監視までバリエーションがあります。もちろん労働の一つとしてその業種に取り組む人々の姿は素晴らしいものですが、基本的に何かを生み出す仕事ではないため、守衛仕事の増加は社会的には労働資源のロスを生むと、ボウルズ教授。

・横軸は格差(ジニ係数)、縦軸は10万人当たりの守衛仕事に就く人の割合;2000年のデータ

出典:TheNewYorkTimes

そういえば、ホラー映画に社会派の要素を持たせることに成功したジョージ・A・ロメロ監督(有名な『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は60年代の若者運動の盛り上がりとその敗北を、そして『ゾンビ Dawn of the Dead』は消費文明の饗宴に興じるわれわれ現代人を、それぞれアイロニーを込めて描いている)の2005年の作品に、『ランド・オブ・ザ・デッド Land of the Dead』というのがありました。

この作品は、ゾンビがはびこる世界で日々ゾンビにおびえながら暮らす99%一般市民層と、ゲーテッドコミュニティーの高層マンションで完全に治安が守られ閉じた世界で優雅に暮らす1%富裕者層、みたいな世界が舞台ですがが、結局現実もそれと同じということでしょうか。

このボウルズの類の話は、活動家系の人々が「新自由主義」批判の文脈において、良く口にすることでもありますが。

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④:貧困地域で暮らすと、より幸せを感じづらくなる

以下のグラフは青色になるほど強く幸せを感じ、紫色になるほど幸せを感じない、ということを示しています。

黒人・白人ごとに示されていますが、人種関係なく、左の貧困地域で暮らした人びとのほうが、右の豊かな地域で暮らした人びとより幸せを感じづらくなっていることがわかります。

出典:Vox

⑤:貧困地域に住む人ほど肥満になりやすくなる

下図は黒人・ヒスパニックと白人とでそれぞれ分けられた、住む地域ごとによるBMI値。

共に、左が貧しい地域で暮らす人々のBMI値で、右が裕福な地域で暮らす人々のそれ。これを見ると、太り気味や肥満は、人種関係なく、裕福な地域よりも貧しい地域で起こりやすいということがわかります。

出典:Vox

⑥:通う学校の地域の貧富と成績

下の図は数学・国語それぞれにおいて、裕福な地域の学校に通った場合と貧しい地域の学校に通った場合の点数の差をグラフ化したもの。

両科目において、在学期間が長くなればなるほど、住んだ場所による点数の開きが大きくなることがわかります

出典:Vox

出典:Vox

⑦:親の階層関係なく、育った地域でIQに差が出る

下の図は母親と子どもがどのような地域で育ったかで、子どものIQにどのような違いがあるかを示したもの。その概要は以下の通りになります。

・貧困地域で育った母親がその後、貧困地域で子どもを育てると子どものIQは平均96 (100が全体の平均)

・中流家庭で育った母親が中流家庭で子どもを育てた場合、子どものIQは平均で104

・貧困地域で育った母親がその後、中流地域で子どもを育てた場合、子どものIQは平均98

・中流地域で育った母親がその後、貧困地域で子どもを育てた場合、子どものIQは平均102

出典:Vox

⑧:格差の拡大と、幸福度の低下には相関関係がある

幸福度指数と格差に関するジニ係数・歪度など指数の関係について、多国間時系列分析を行うと、確かに、格差の拡大と幸福度の低下に相関関係があることが分かります。

出典:内閣府

⑨:格差社会になればなるほど、低学歴者を親に持つ子供のテストの点数が下がる

出典:OECD

横軸は不平等度を示すジニ係数。縦軸は14歳児における数学の平均点を示したもの。

OECDや成人技能調査(PIAAC)に基づく分析によれば、所得格差が拡大するにつれ、両親が「Low PEB(高校教育未修了者)」の場合ほど、格差の被害を受け、個人の人的資本の低下=学力の低下が起きてしまいます

一方多くの実証結果が示すには、格差社会とはすなわち「産業構造の変化による、高学歴者(ただしSTEM系など実学系に限る)が優遇される社会」ですから、このような社会において勉強が苦手なことは、人生上少なからずのリスクを負ってしまうことになります。

これが両親が「High PEB(両親のいずれかが高等教育:大学の修了者)」「Medium PEB(両親のいずれかが中等教育;高校および高等教育以外の後期中等教育の修了者)」の場合は、子どもの学力は低下しないとのこと。

すなわち、格差は「不利な状況に置かれた個人の教育機会と上方流動性に大きく影響する」ことになります。

⑩:格差の放置は経済成長を損なう

出典:OECD

経済成長…。まあ例えば2002年2月から2007年10月までの「好景気」、いざなみ景気において労働者の平均給与所得がダダ下がりだったように、最近では経済成長がどれだけ成し遂げられようと、それが実感に結びつかないのがデフォルトですから、経済成長がどうこう言うのはある種の白々しさを感じますが、まあ一応指標として。

OECDの報告によれば、「ジニ係数が(OECD 諸国の過去 20 年間での平均値である)3 ポイント上昇すると、経済成長率は 25 年間にわたり毎年 0.35%ずつ押し下げられ、25 年間の累積的な GDP 減少率は 8.5% となる」とのこと。

すなわち図表の推計によれば、格差の拡大がメキシコとニュージーラン ドでは経済成長率を10%以上、 英国、フィンランド、ノルウェーでは 9%、 米国、イタリア、スウェーデンでは 6−7%、そして日本では5%、それぞれ押し下げることになったそうです。

参考文献:

Vox ”Living in a poor neighborhood changes everything about your life”

healthinequality.org

The New York Times ”One Nation Under Guard” 2014年2月15日

内閣府「平成19年度 年次経済財政報告(経済財政政策担当大臣報告)-生産性上昇に向けた挑戦-」

OECD 「特集:格差と成長 所得格差は経済成長を損なうか?」2014年12月

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