アップルにおける中国市場の重要性の高まり
iPhone 6におけるiPhoneシリーズ史上これまでにない成功、とりわけ中国での大幅な売り上げ増の結果、アップルにとって中国市場は非常に重要な市場となりました。
アップル自身は秘密主義のため地域別売り上げというものを公表していないため、代わりにマーケティング会社によるものを参考にすると、下の図は調査会社 Counterpoint(カウンターポイント)の推定によるアップルの地域別売上高シェアを示した図。2014年10月のiPhone 6シリーズの発売後、赤で示された中国のシェアが急激に伸びていることがわかります。
それまで15%程度だった中国の地域シェアは、iPhone 6の発売後、図では4Q2014から急激に上昇し、最近2015年第2四半期(4~6月:2Q2015)においては26%ほどにまで上昇しました。現在では青で示されたアメリカに次ぐ、第2の地域シェアを占めるにまでになっています。
すでに中国の大商戦期である春節(旧正月)を含む今年1~3月期の売上においては、米国のそれを上回ったとの報道も存在します。次のものは米・ブルームバーグによる報道。
米アップル の中国での「iPhone(アイフォーン)」販売は、1-3月期に初めて米国を抜いた可能性がある。春節(旧正月)期間中の堅調な需要が寄与した。 米アップル の中国での「iPhone(アイフォーン)」販売は、1-3月期に初めて米国を抜いた可能性がある。春節(旧正月)期間中の堅調な需要が寄与した。(…中略)同社は国別の出荷台数を明らかにしていないものの、クリエーティブ・ストラテジーズによると、大中華圏の1-3月アイフォーン販売台数は1800万-2000万台、米国は約1400万-1500万台と見込まれている。
また米大手新聞ニューヨークタイムズによれば「クックCEOが最近語ったところによると、中国地域が最大の売り上げを稼ぐようになるのは時間の問題だ」とのこと。
iPhone依存が高まるアップルの経営体質
加えて先ほどの調査会社Counterpointによれば、近年、iPhoneの好調とiPadの不振に伴って、アップルの経営におけるiPhone依存が高まり、iPhoneが占める売り上げの比重が65~70%近辺まで高まっているそうです。「アップル株への投資は、これまで以上にiPhoneへの投資になる」とは、英サンフォード・C・バーンステインの財務アナリストトニ・サコナギ氏の言葉。
これらを踏まえてみるに、今後アップル内でますますiPhoneが重要になるのはもちろんのこと、そしてそのiPhoneを支える市場として中国市場の重要性が高まっていくことは想像に難くありません。
大画面ディスプレイが大好きな中国人
さてそんな中国市場ですが、それまで中国であまり売れていなかったiPhoneがiPhone 6シリーズ以後大成功した要因にディスプレイの大型化がある、という話についてはご存知の方も多いと思います。
下の図は中国2015年8月のスマートフォン売り上げランキング。このランキングの「尺寸(ディスプレイサイズ)」という項目を見ると、基本的に5インチ以上が多数を占めていることがわかります。
中には5.7インチや6.0インチのスマートフォンもランキングし、中国での大画面ディスプレイの需要の高さがうかがえます。過去の販売ランキングなどと比べても、今後中国ではますますの大画面ディスプレイが求められる傾向が見受けられます。例えばそれを示唆するように、サムスンは来年発売予定のフラグシップスマートフォンGalaxy S7において、5.7インチディスプレイを採用するだろうことが噂されています。
iPhone 7ではさらなるディスプレイの大型化、高解像度化がありうる?
よってアップルで今後中国の重要性が高まり経営上の生命線となる以上、来年登場のiPhone 7では、現行のiPhone 6での4.7インチ、iPhone 6sでの5.5インチから更なるディスプレイ大型化もありうるのではないでしょうか。
iPhoneでは基本的に「s」シリーズでのディスプレイ変更は行われてきませんでした。今後もその流れに沿うものと考えると、来年の「7」でのフルモデルチェンジでサイズ変更が行われないとなるとすると、それはすなわち2018年までディスプレイサイズが変更されないことを意味します。
そうすると現在は良くても2,3年後はiPhone 5sまでの時のように、大画面を希望するユーザーのニーズに応えきれず、また中国で取り残されてしまうことも十分考えられます。
とはいえ、これまでディスプレイの大型化には慎重だったアップルですから、これまで通りサイズ据え置きということも十分にあるでしょう。
加えて他のメーカーと違って、アップルってあまりユーザーのニーズの応えないというかユーザーのニーズを自分たちで作り出すというか、「ユーザーよ、黙って俺について来い」って感じなようなので、更なる大画面ディスプレイがユーザーから求められても答えない可能性は普通にあり得ますね。
参考文献
The New York Times (翻訳:東洋経済)「中国人は、なぜiPhone好きになったのか」2015年01月29日
“2015年9月中国手机市场分析报告” ,ZOL.COM