原文:Becky Oskin,”Why deadly Japan volcano erupted without warning” / Livescience.com /September 30, 2014, 12:14 PM
・予測することが困難な水蒸気爆発
今もって行方不明者の捜索が続く御嶽山では月曜日(9月29日)、死者の数が36名に達した。
御嶽山の噴火は週末である28日に起こり、登山客を驚かせた。日本で二番目の高さを持つ標高3,067メートルの山にはこの日、250人前後の登山者がいたと見られている。
ほんの一か月前には、アイスランドのバルダルブンガ火山において地下のマグマ蓄積が進み、間もなく噴火が始まるだろうことが知られていた。地震予知やGPSを用いての地形変動、火山性ガスの解析技術などは、目まぐるしい進歩の途上である。
これらと似たような、火山を監視するためのハイテク網は日本にも存在する。
しかし専門家によれば、犠牲者を出した土曜日の噴火は水蒸気爆発であり、これは予測することが非常に困難だということである。
「最適な場所にモニターシステムが配置されていれば、地下深くでとしても活動を探知できないということはないでしょう。」
こう語るのはニューヨークにあるラモント・ドーアティ研究所の火山学者であるフィリップ・ルプレヒト。
「しかしながら、水蒸気爆発をモニタリングすることにおいては我々は充分な情報や技術を持ち合わせていないのです。」
・それは突然に
水蒸気爆発は単純に水と熱から起こる。ここでマグマによって熱され、硬岩の「オーブン」となった火山内部を考えてみてほしい。
地震とマグマの移動はこのオーブンをゆすり、岩を割ることがしばしある。そしてオーブンに新しく「ヒビ」が出来ると、キッチンのオーブンの扉を開けたときと同じく、熱気が漏れる。もし地下水がヒビの中に漏れていたら、水はたちまち高熱によって蒸気になる。この瞬間的に起こる変化に伴い、周囲の岩石が粉砕される。水蒸気は水より大きな空間を必要とするため四方八方へと膨張拡散し、結果山の側面や頂上に穴を開け噴き出るのである。
「マグマが実際に噴火することはないのです。噴火するのは溶かされ元の状態を失った岩石なのです。」アメリカ地質研究所のマーガレット・マンガンはこう語る。
ヒビは急に開くことがある、とマンガンは述べる。また一方で、過去に水蒸気爆発が起きた火山において頻繁に火山性活動が見られた際には、厳重な警戒態勢を敷く時が来たことを意味するとも付け加えた。
今月初旬、日本の気象庁は御嶽山で火山性微動がみられ、頻発していることを警告した。その震動とは小さく、ほとんど感じることのない地震である。しかし気象庁は火山の警戒レベルを通常のレベル1から引き上げることはしなかった。9月28日の発表において気象庁は、地表変化や頂上の火山性ガスの噴出等のマグマ上昇の兆しは認められなかったと述べている。
活火山においては、水蒸気爆発は時としてまるで噴火の道筋を作るかの如く、溶岩噴火の前に起こることがある。インドネシアで1883年に起こり、その爆発音が「世界中で聞こえた」とまで言われたクラカトア火山の噴火においても、まず水蒸気爆発が発生し、その後溶岩の爆発が起こった。同様の爆発はマグマが地下水に触れれば起こる可能性がある。これは火山学者がマグマ水蒸気爆発と呼ぶものである。この場合巨大な爆弾が爆発したかのような、マールと呼ばれるクレーターが後に残る。
しかしながら御嶽山の爆発においては、溶岩は確認されていない。
気象庁は現在、御嶽山を含む国内11か所の火山に対して警報と警告を行っている。御嶽山が直近で水蒸気爆発を起こしたのは2007年、火山爆発は1979年だった。
・死の灰が流れる
土曜日の爆発は火山灰と火山性ガスが入り混じった火砕流の発生を引き起こした。この火砕流は溶鉱炉のような高温を持ち、台風と同じような速度で流れる。火砕流に巻き込まれながらも生き伸びた登山者は、火砕流の端の場所に位置し、なおかつその火砕流の温度が比較的低かった可能性が高い。安全な場所に御嶽山がなってから、科学者による検証が待たれる。
溶岩流により引き起こされる火砕流は、温度が摂氏700度、速度は時速161㎞にも達する。
「その流れはあまりにも早く、人が走って逃げることはできません。」こう語るのはマーガレット・マンガン。
生き延びたおよそ200名の人たちは、窒息しそうな火山灰の中を通って這い降りるか、またはロッジ小屋の中に避難するかによって、土曜日の爆発を生き延びたのだと考えられる。生存者達の悲痛な話から伺えるのは、不気味な暗闇、空から雨の如く降り注いだ岩、分厚い火山灰の中における呼吸困難との戦いである。ルプレヒトによれば、水蒸気爆発は極めて純度の高い灰粒子を生み出す傾向がある。灰は御嶽山の南斜面を約3kmに渡り覆った。
「火山灰の粉塵の嵐に襲われることは、サウナの中にいるようなものであり、生存者たちはどうやって呼吸出来たか想像できません」とルプレヒトは語る。
二酸化硫黄など火山性ガスは窒息を引き起こしさせるし、高速で射出された岩石は致命傷を引き起こす可能性がある。昨年フィリピンのマヨン火山で起きた水蒸気爆発では5名の命が失われた。
原文:
livescience.com:Why Deadly Japan Volcano Erupted Without Warning