気候変動が原因で約500万人の死者、1兆2000億ドルの損害
2012年に『Climate Vulnerability Monitor: A Guide to the Cold Calculus of A Hot Planet (邦題:気候の脆弱性調査:熱い惑星の冷たい計算への手引き) 』と題された研究報告書が公表された。
これはヨーロッパに拠点を置く国際援助に関する非営利組織DARAが、発展途上国20カ国で構成する「気候変動に脆弱性を持つ諸国会議」の委託により作成したもので、報告書の作成には科学者、 経済学者、政治アナリストら総勢50人が参加している。
報告は驚くべきものとなった。地球温暖化ガスの排出による平均気温の上昇は、氷床の減少や異常気象、干ばつや海面上昇といったものの要因となる。これらは農業生産に大きな損害をもたらし、結果として栄養失調、貧困とそれによる餓死などが蔓延、すでに年40万人近くの人々の死亡因となっているという。また化石燃料の使用による大気汚染により、全世界で毎年450万人が死亡している。特に発展途上国においてその被害は大きく、被害の9割は発展途上国に集中するものだ。
- 気候変動は、すでに年40万人近くの人々の死亡要因となっている
- 化石燃料による大気汚染により、全世界で毎年450万人が死亡している状況にある
- 被害の9割は発展途上国に集中する
・気候変動は、世界全体で年1兆2000億ドル(約1420兆円)以上の損害を生み出している
くわえて報告によれば、気候変動は世界全体で年1兆2000億ドル(約1420兆円)以上の損害を生み出している。この額は世界全体のGDP(国内総生産)のおよそ1.6%にもあたるものだ。
研究者たちは化石燃料の使用ペースが現在の水準のまま推移すれば、2030年までにはGDPへ与える被害は3.2%にまで上昇、最貧国においては被害が11%まで上昇するとみている。また気候変動によってもたらされる死亡者数も600万人にまで増えると予測された。
・溶ける北極の様子(動画)
バングラデシュ首相であるシェイク・ハシナは、・溶ける北極の様子(動画)報告書において次のように述べる。
「地球の温度が1度上昇すると(注:地球の平均気温は19世紀と比べ、すでに0.7度上昇している)、農業生産は10パーセント減少するが、それはバングラデシュにとって、約400万トン、金額に直すと金額に直すと約25億ドルの穀物が失われることを意味する。この額はすなわちGDPの2%にあたる。その他の機会損失も含めると、我々はGDPの3-4%の被害に直面することになる。このような被害が無ければ、バングラデシュの経済はもっと確実な成長を遂げることができるはずなのだ。」
当然のことながら発展途上国だけでなく先進国もまた、気候変動による異常気象や干ばつ、洪水などの災害によって被害を受ける。2030年までにアメリカは、GDPの2%の損害を受ける可能性がある。同じく中国は、この時期までに1兆2,000億ドルの被害が発生する可能性がある。
・温暖化はすでに深刻な影響を与えている
各国政府はここにきて最近、気候変動は遠い将来に影響をもたらす長期的な問題ではなく、すでにその影響は喫緊のものであるという認識に変化してきている。
北極の氷の溶解スピードは驚くべきものであり、今年は凍結面積が最小を記録した。科学者達はこのままのスピードで溶解が続けば、2020年までに北極は夏に氷が無くなってしまう可能性があると警告している。
- 2020年までに北極は夏に氷が無くなってしまう可能性がある
多くの研究が示唆するには、この氷の溶解が、低温と曇りが多く、雨量も多かった全世界の天候と関連しているということだ。イギリスではこのような天候不順が6年間続いている。アメリカでは今年発生した大干ばつが食料品価格の高騰を招き、インドではモンスーンが広範囲に影響を及ぼし、農民に被害を与えた。
第15回気候変動枠組条約締約国会議で議長を務め、現在は欧州連合で気候変動担当欧州委員であるコニー・ヘドガーは、イギリスの高級紙ガーディアンに寄稿し、こう述べている。
「気候変動と異常気象は遠い未来のことではない。以前では極めて特殊だった異常気象が日常的なことになりつつある。」
また国連気候変動枠組条約事務局で事務局長を務めたマイケル・ザミット・
参考文献:
DARA:A Guide to the Cold Calculus of A Hot Planet
The guardian:Get used to ‘extreme’ weather, it’s the new normal-Connie Hedegaard