黒海での原発建設が取り消えるのを恐れた?
海外の独立系メディアVICE NEWSは2月6日、「警察に近い人物からの情報」として、日本政府が先のイスラム国人質事件においてトルコ国内に対策本部を置かなった理由に関する記事を掲載しました。
以下該当記事
”Inside Japan’s New War With the Islamic State”(日本のイスラム国との新しい戦争の内幕)より引用
“We wanted to set up the emergency hostage crisis headquarters in Turkey,” a source close to Japan’s National Police Agency who has had previous experience with international hostage situations told VICE News. “Turkey has successfully negotiated with ISIL to free hostages. They were the logical choice and the best choice… not Jordan. The Ministry of Economy, Trade, and Industry; MOFA; and the Cabinet office opposed our advice on the grounds it could negatively affect Japan’s $22 billion deal with Turkey to build a nuclear power plant along the Black Sea. If things went wrong with Japan during the negotiations, Turkey might be reluctant to have new Japanese-built nuclear facilities on their soil for ISIL terrorists to attack.”
以下訳
「我々は対策本部をトルコに設置しようとしていた。」日本の警察に近く、前にも国際的な人質事件を担当したことがある人物はVICE NEWSに対してこう語った。
「トルコはISILとの人質交渉にに成功したことがある。論理的に言ってトルコが最善の選択だった…。ヨルダンではなく。だが経済産業省、外務省、内閣府は我々のアドバイスに反対した。なぜならそれはトルコと220億ドル(約2.6兆円)で契約した、黒海沿岸の原子力発電所の建設に悪影響を与えるかもしれないからだ。もし交渉中がうまくいかなければ、トルコはISILのテロ攻撃を恐れて、トルコ国内に日本の新しい原発の建設をためらうかもしれないからだ。」
専門家からも疑問の声
今回の人質事件に関しては、対策本部をなぜトルコではなくヨルダンに置いたのか、専門家からも疑問の声が上がっていました。例えば同志社大学大学院教授で中東問題の専門家・内藤正典氏はこう述べます。
内藤:それにしても、日本政府が初動の段階でヨルダンに現地対策本部を置いたのは大きな疑問です。交渉の窓口としてはトルコのほうがよかった。シリアの反体制派の人たちも、なぜトルコに置かなかったのか、と不思議がっているし、当のトルコ人もそう言っている。なぜヨルダンだったのか? 官邸が読みを間違えたとしか思えません。
-週プレNEWS「内田樹×内藤正典「日本政府は読み間違えた。なぜトルコではなく、ヨルダンに現地対策本部を置いたのか?」より
本文中に出てくる「220億ドル(約2.6兆円)で契約した、黒海沿岸の原子力発電所」は、黒海沿岸のシノップに三菱重工業、伊藤忠、仏GDFスエズの3社で建設する予定だったそうです。ロイター通信の報道によれば、建設着手は2017─18年、稼働開始は2023年になるとの見通しであるとのこと。
またVICE NEWSの記事は、対イスラム国として200億円を支援するとした安倍首相のスピーチが首相の独断であり、外務省が驚いたということも触れています。
And so when Abe gave his speech, MOFA was caught off guard. In addition, the $200 million Abe promised had not yet been approved by the Diet. MOFA later clarified that Abe meant in the Cairo speech that he was going to allocate $200 million “with the approval of the Diet.”
以下訳
だから安倍が演説をすると、外務省は驚いた。加えて、安倍が約束した2億ドルはまだ国会で承認されていなかったのだ。のちに外務省は、安倍がカイロで述べた2億ドルは「国会の承認を得て」送るつもりだという意味である、という声明を出した。
今回の報道が本当のことであることかどうかについて、わかることはありません。
参考文献
VICE NEWS:Inside Japan’s New War With the Islamic State