地震雲から地震が起こる?
熊本の地震に関連し、最近、ツイッターなどあちこちのSNSで「地震雲」を見たという声を聞きます。
例えばTwitterで「地震雲」と検索すると、以下のようなツイートが次から次へと出てきます。
(特定の個人を非難することが目的ではないので、ツイッターのアイコン・アカウント名などは消去加工しています)
しかしながら結論から先に言うと、「地震雲」なるものはトンデモであり、実在しないので不安がる必要はありません。
地震雲はあるのですか?
雲は大気の現象であり、地震は大地の現象で、両者は全く別の現象です。雲のたなびく向きは、上空の気流によって支配されています。気流が地形の影響を受けることはありますが、地震の影響を受ける科学的なメカニズムは説明できていません。「地震雲」が無いと言いきるのは難しいですが、仮に「地震雲」があるとしても、「地震雲」とはどのような雲で、地震とどのような関係であらわれるのかが科学的な説明がなされていない状態です。
(…中略)地震はいつもどこかで発生している現象です。雲は上空の気流や太陽光などにより珍しい形や色に見える場合がありますし、夜間は正確な形状を確認することができません。形の変わった雲と地震の発生は、ある程度の頻度で発生する全く関連のないふたつの現象が偶然見かけ上、 そのように結びつけられることがあるという状況であり、現時点では、科学的な扱いは出来ていません。
質問:地震前に地震雲が現れるという話をよく聞きます。本当でしょうか?
回答:地震研究者の間では一般に、雲と地震との関係はないと考えられています。
地震の前兆としての「雲」に関する研究は、過去に何度か発表されたことがあるのは事実で、雲と地震の関係が皆無であると断言はできません。
しかしながら、過去の報告例は大地震の前にたまたま特異な雲の形態をみたことで、地震と特異な雲の形態を結びつけてしまうケースが圧倒的に多いのではないかと考えられています(その一方、地震が起きなかった場合には雲のことを忘れてしまいます)。
またネットメディアのJ-CASTは2013年6月の記事において、過去これまでに話題になった”地震雲”が本当に当たったかを調査、その上で「地震雲はハズレ」と結論付けています。
「地震雲」は本当に当てになるのか。ここ最近で地震雲がネットで騒ぎになった主要な例を挙げてみよう。なお、地震雲が観測されてから実際に地震が起こるまでは、早ければ直後、遅くても1週間以内とされることが多い。
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2012年5月12日:東京上空で複数の地震雲が目撃される
2012年5月28日:静岡で「超スーパー地震雲が発生」との写真がツイッターで1000RTされる
2012年6月26日:「地震雲の第一人者」が、7日以内に東京で震度6〜7の地震が起こると予想したと夕刊紙が報じる
2012年8月29日:M7〜8の地震が4〜5日以内に起こる地震雲が東京で、アマチュア研究者によって観測される
2012年10月13日:千葉県を中心に大型の地震雲が見られ、ネットが騒然となる
2013年1月10日:東北〜関東で10日以内に地震発生の可能性があると、地震雲研究者が夕刊紙で「警告」する
2013年2月9日:東北から中部地方の広範囲で地震雲が目撃される
2013年3月18日:神奈川県などで「竜巻型」の地震雲が見られツイッターが騒然となる
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「ハズレ」がほとんどだ。こうしてみると、あまり騒ぎすぎる必要はなさそうだ。
引用:J-CAST「怪しい「地震雲」に踊らされる人たち 科学的根拠ゼロ、「予知」も大ハズレ」2013年6月8日
「地震雲」は人間の思考の”クセ”に入り込む
上の専門家たちの意見、あるいはメディアの調査を伺う限り、やはり「地震雲」の存在は認められなさそうです。
しかしながら、どれほど専門家や調査報道がその存在を否定しても今後も「地震雲」に関してのデマが無くなることはなさそうであり、それが事態をより一層ややこしくさせます。
どういうことでしょうか。
先の説明で、人々が地震雲があると思ってしまうことについて地震学会が「大地震の前にたまたま特異な雲の形態をみたことで、地震と特異な雲の形態を結びつけてしまうケースが圧倒的に多いのではないか」と述べていることが重要です。
すなわち、人が地震雲があるとみなしている場合には、現実を都合よく解釈し、実際には地震雲と全く関係のない出来事も地震雲と結びつけて考えてしまうということが起こるのです。
そのため、どれほど科学的・合理的に否定されても地震雲を信じる人の中から地震雲の存在が消えることは中々ありません。
認知心理学用語でこれを「確証バイアス」といいますが、代表的な例として占いがあげられるのをご存知の方は多いでしょう。
考えてみると科学が発達した現在においてまだ「占い」があることには少しびっくりしますが、あれを人が信じるメカニズムは地震雲のそれと同じものです。
すなわち、人は占いの内容多くについて、的中した場合だけ思い出し、外れた場合は都合よく忘れてしまいます。加えて特に悪い内容のほうが的中したと判断する傾向が高いこともわかっています。この悪い内容ウンヌンなどは「物事を獲得することより失うことの方がより強く反応する」という人間の習性により起こりますが、話がそれるのでここでは省略。
要するに人間の思考を担う認知・心理的メカニズムにはクセがあり、そのために、どうしても地震雲や占いの類を信じる人は出てきてしまうのです。
何ともしがたい苦しい現実ですが、地震雲や占いを信じるくらいなら現実世界においてもそれほど実害はないと思うので、信じる人をそのままにしておくのも一つの手かもしれません。
(ここまで偉そうなことを言ってきましたが、僕自身占いは時々参考にします)
ただ今回の熊本地震に関連して『「地震雲を見た!地震が起こる!」などと、地震雲から地震を過度に恐れることはない』、それが今回の記事では言いたいのです。