【アサクリ問題】大河ドラマ時代考証の歴史学者「ロックリー氏の”日本に黒人奴隷制があった”というのは明白なデマ」
界隈を騒がせているUBI「アサシンクリードシャドウズ」の弥助問題に関して、数々のNHK大河ドラマの歴史考証を務めてきた歴史学者・平山優氏がコメント。
なんか、織田信長に仕えた黒人の弥助の話題になっているみたい。彼に関する史料はかなり乏しいが、信長に仕える「侍」身分であったことはまちがいなかろう。出身の身分がどうであれ、主人が「侍」分に取り立てれば、そうなれたのが中世(戦国)社会。なんでそんなことが言えるかといえば、①信長より「…
— K・HIRAYAMA (@HIRAYAMAYUUKAIN) July 19, 2024
なんか、織田信長に仕えた黒人の弥助の話題になっているみたい。
彼に関する史料はかなり乏しいが、信長に仕える「侍」身分であったことはまちがいなかろう。
出身の身分がどうであれ、主人が「侍」分に取り立てれば、そうなれたのが中世(戦国)社会。なんでそんなことが言えるかといえば、①信長より「扶持」を与えられている、②屋敷を与えられている、③太刀を与えられている、と史料に登場するから。
「扶持」を与えられ、信長に近侍しているということは「主従の契約」「扶持の約諾」という重要な用件を満たしている。また、太刀を許されているので、二刀指であり、下人などではない(下人には刀指が認められていない)ことも重要。ましてや、屋敷拝領ならば、疑問の余地はない。宣教師の奴隷を、信長が譲り受けたところまでは、奴隷だったのだろうが、上記の①~③により、彼の意思によって「侍」分になったのだろう。
本能寺の変時に、明智方が「動物」「日本人に非ず」などとして殺害しなかったというのは、それは明智が弥助を「侍」と認定しなかった(差別意識があったのだろう)だけにすぎない。身分が低い者を、主人が「侍」に取り立てることは、当時としては当たり前であった。そもそも、秀吉って立派な事例があるじゃんね。
一方で、日本大学准教のトーマス・ロックリー氏による「日本に黒人奴隷制があった」との説に対しては、「悪質なデマ」と断言
それはデマですね。悪質な。
— K・HIRAYAMA (@HIRAYAMAYUUKAIN) July 20, 2024
明け方に行った私の投稿に対し、反論、批判(非難?)が寄せられています。そこで、私の見解を記すことにします。まずは、誰もが議論できるよう、史料の提示から始めましょう。なお、私が行ったのは、弥助という人物についてのみです。 #弥助
— K・HIRAYAMA (@HIRAYAMAYUUKAIN) July 20, 2024
まずは、根拠となった史料を提示する。太田牛一の『信長公記』には、複数の別本が存在し、その集成と紹介はいまだに実現していない。全文が公開されていない尊経閣文庫本には、世間に流布しているものとは別の記述が存在している。
(1)『信長公記』(陽明文庫本)天正九年二月廿三日条…— K・HIRAYAMA (@HIRAYAMAYUUKAIN) July 20, 2024
まさにそこです。信長に見参し、刀を与えられていること、ここが最も重要です。何度もいいますが、中間以下は帯刀できないのです。 https://t.co/qtEr4QYe1s
— K・HIRAYAMA (@HIRAYAMAYUUKAIN) July 20, 2024
では彼らは、侍身分ではないのでしょうか。小泉重永という国衆の家臣(被官)なのですから、侍身分であることは間違いないと思います。彼らは、まだ名字を拝領していない(名字を蒙る)だけだと考えています。彼らは、「殿原」と呼ばれる人々で、村では「殿」「方」と尊称される村の侍身分です。
— K・HIRAYAMA (@HIRAYAMAYUUKAIN) July 20, 2024
②名字(家名)と侍身分
名字がないから、侍ではないという非難が寄せられています。確かに、名字(家名)の有無はとても重要な論点です。しかしながら、戦国期には、名字がなくとも侍身分である人物がいるのです。一番わかりやすい事例を紹介しましょう。— K・HIRAYAMA (@HIRAYAMAYUUKAIN) July 20, 2024
平山優 – Wikipedia
平山優は日本の歴史学者。専門は日本中世史・近世史。2023年健康科学大学特任教授。
大河ドラマ『武田信玄』時代考証上野晴朗助手で関わり、その後『真田丸』、『どうする家康』時代考証となる。 2002年ごろから、一般向け著作の執筆や編集・監修も手がける。
2021年、映画『信虎』武田家考証。