「ソニーがスマホ事業から撤退しないわけ」をソニーモバイル社長が語る
先月10月29日に発表された2015年度第2四半期決算において、Xperia Zほかスマートデバイスの開発担当を担うソニーのモバイル部門は、200億を超える赤字を発表しました。
ソニーモバイルの赤字は決して珍しいことではなく、特に2014年度通期には2000億を超える営業赤字を出しています。そのような状況のためか、ここ最近、まことしやかに囁かれるようになったのが、ソニーのモバイル端末事業からの撤退、もしくは売却の噂。
この会社の場合、すでに先例として有名なところではVAIOや、またゲームが好きな人からすればソニーオンラインエンタテインメントというケースがあるので、ユーザーからすればどうしてもいぶかしがんでしまいます。
とはいえソニーがスマートフォンから撤退することについて、ユーザーはそれほど心配しなくてもよいのかもしれません。
数か月前、ソニーモバイル社長の十時裕樹氏は中東のビジネス誌「Arabian Business」とのインタビューに応じ、あらためてソニーのモバイル端末開発からの撤退の噂を否定しました。
ここまでなら、これまでにもあったよくある話。しかしながら十時社長はこれまでとは違う話を持ち出して、ソニーがモバイル部門を決して手放さない理由を話したのです。
曰く、
スマートフォンは、他のデバイスに完全に接続されていて、また、人々の生活にも深くコネクトしている。多様化の可能性は極めて大きい。私たちは、IoT(モノのインターネット化)の時代に向かっており、その観点で数多くの新しい分野の製品を生み出さなくてはならない。そうでなければ、非常に重要なビジネス分野を見逃す恐れがある。そのような意味で、われわれが現在のモバイル事業を売却したり、撤退したりすることは決してない。
わかりにくいコメントとなっていますが、すなわち次の通りです。
現在、次のビジネス分野として「IoT(モノのインターネット化)」の時代が到来すると言われています。
これは「モノのインターネット化」の名前が示すように「これまでインターネットに繋がっていなかったさまざま分野のさまざまなモノ、例えば自動車や家電製品などインターネットを通じて繋がるようになっていく」というもの。
今年発売されたアップルウォッチが良い例です。あれなどは、これまでネットと全く関係なかった「時計」がインターネットとつながることで、また新たな時計の使い方の可能性を示してくれました。そのほかにも、最近では心拍数計やら万歩計やら体重計やら色んなものがインターネットを介して繋がっています。すなわちこれがIoT。
そしてアップルウォッチがスマートフォンが無いと使い物にならないように、モノのインターネット化社会においてスマートフォンは中心的役割を担う存在として必要不可欠であり、そのため、ソニーはこれからもスマートフォン事業を続ける必要がある、十時社長が述べているのはそういったことです。
調査会社IHSによれば、スマートウォッチの年間出荷台数は現状の480万台から2020年には1億台を超え、そのほか調査会社generator reseaachによる2027年にはスマートウォッチの出荷台数がスマートフォンの出荷台数も超えるという「ほんとかよ」と言いたくなるような予測まであったりしますが、それでも来るべきIoT社会でソニーが見据えているのは単にスマートウォッチだけではないでしょう。
今後IoTテクノロジーの分野で最も有望株として期待が寄せられているのが、そうグーグルカーで知られる「自動運転車」の分野であり、実用化が期待される2030年には20兆円もの巨大市場が誕生するとの試算まであります。
やはりというか、最近ではアップルも自動運転車を作り始めたそうですね。
この分野でもやはりスマートフォンとの融合が期待されています。すでに2014年1月に開催された米国最大の家電商品展示会「インターナショナルCES」では、独アウディや独ボッシュから、車外からスマートフォンを使って自動駐車を行うデモンストレーションが披露されました。
・アウディの自動運転車
駐車場まで無人運転で駐車、再び乗りたい時はスマホで呼び出すと目の前まで来てくれる
未来の自動車にとってスマートフォンは、運転からエンターテインメントまで様々な役割を担う、司令塔的な存在になるのかもしれません。
先ほどのインタビューによれば、2014年には2000億を超えていたソニーモバイルの赤字も最近は抑えられるようになってきたとのことで、IoTと合わせて考えてみても、ソニーのモバイル事業からの撤退は当分は避けられるのでしょうか。