トマ・ピケティ氏による経済学の本『21世紀の資本』がブームですね!
人も殺せそうな分厚さと重さ、加えて約6000円もするという高価な値段なのに、オカタイ学術本とは思えない驚異的な売れ行きを見せているるとのこと(2015年2月現時点で13万部)。
そんな現在話題沸騰中の『21世紀の資本』、もしくはそれにした関連した話題について、これから数回に分けて書いていきます。
「サルでもわかるピケティ入門」のタイトル通り、他の解説書・解説ページでは見落としそうな基本的なところから始めて、図表も織り交ぜわかりやすい記述を心掛けていきます。
第1回目のテーマは「①:r>gってなに?」です。
①:r>gってなに?
最初に端的なことを言えば、ピケティは世界各国の200年以上にわたる税務局の統計データを調べ、
資本収益率rが経済成長率gよりも高い
ことを示しました。
そこから導かれた結論が、良く知られる有名な式「r>g」となります。
資本・経済成長って、ナンダ?
そもそも資本とはなにか?経済成長とは何か。順に解説していきましょう。
・資本とは
まずは資本。『21世紀の資本』においては、「土地、建物、住居などの物理資本と株式、債券、特許などの金融資本」のことを示しています。
・経済成長率とは
一方経済成長率ですが、これは「一定期間GDPがどれくらい増えたかを示す指標」のこと。GDPとは「一定期間に生み出された付加価値の合計のこと」ですが、その付加価値を生み出すのは働く人々の労働であるわけで、ここにおいては労働への対価、すなわち賃金が多くを占めています。
まとめてみよう
※注意
さてここで気を付けたいことがあります。先ほども述べました通り、ピケティにおける「資産」とは「所有でき、かつ何らかの市場で取引できるものの総和」として定義されています。
これらの点は、現在ピケティに寄せられるいくつかの批判の内の一つに対する「フラグ」となっています。
「r>g」の意味するところ
さてピケティがデータを収集してわかったことは、繰り返すように、どの時代においても資本収益率rが経済成長率gを上回る、ということでした。
下の図1を見てもわかるとおり、資本収益率rが時代による変化はあまりなく、4-5%を推移しています。一方、経済成長率gは時代による変化が激しいのがその特徴。20世紀には4%近かったその数字は、2100年ごろには1.5%(推定)ほどになると見られています。
これは何を意味するのでしょうか。
すなわち資本収益率が5%、経済成長率が1%になった場合、株式投資のほうが労働所得より5倍利益を得ることが出来るということになります。
ただ、株式投資というのは大きな値上がりを期待できる反面、値下がりする可能性も高いという一種の「賭け」であり、そして「賭け」に参加するということは、そのブレの大きさを受け入れたということになります。
ですから必ずしも株式で得られる利益が常に労働所得を上回っているとは限りません(身の回りを見てもわかると思いますが、株で常に成功するわけないですよね)。
したがって、r>gをより正確に表現するならば、「賭け(投資)における利益の期待値と確実に得られる益の差が、労働所得を上回っている」、ということになります。
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今回は以上で終わりです。次回のテーマは「②:格差拡大のメカニズム」です。
・用いた図表の引用元
『21世紀の資本』の翻訳を行なった経済評論家、山形浩生氏のホームページ内「ピケティ『21世紀の資本』図表」ページ
連載:サルでもわかるピケティ入門
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