日本の労働環境が悪化していることがよくわかる統計データ
・ほか社会データ系などの記事
(1~2番目は兄弟サイトに飛びます)
1.この20年間でボーナスは減り、残業時間は増えた
特別給与(=ボーナス)は下がり続け、所定外労働(=残業)は増えた
2.残業時間はここ数年急増
出典:日本経済新聞
グラフは厚生労働省の「賃金統計調査」を基に日本経済新聞が作成。2014年の残業時間は週170時間と調査開始(1993年)以来最長となった。
なお「賃金統計調査」ではいわゆる”サービス残業”はカウントされないので、実際の残業時間はもっと長い。
3.総労働者の労働時間は減少している。ただし…
出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」
総労働者による総実労働時間は減少している。
ただし、これはパート・アルバイトなど短時間労働者が増えたことによる「数字のマジック」であり、こと正規雇用労働者においては労働時間は変化していない(下「4.正社員に限れば、労働時間はむしろ90年代から増えている」参照)。
4.正社員に限れば、労働時間はむしろ1990年代から増えている
出典:NTTコムリサーチ
グラフを見ればわかるように、正社員労働者の年間労働時間については横ばい~増加となっている。
・山本 勲、黒田 祥子(著)『労働時間の経済分析』において説明されている、日本の正規雇用労働者の長時間労働がなくならない理由
- 高等教育(=大学)での適切な職業教育が行われない日本では、企業側に正社員を雇ったり教育することへのコストがかかる
- そのため、日々需要量が代わり仕事量も変わる目の前の仕事に対し「人を多く雇って対応しよう」というよりは、むしろ「忙しい時期は今いる正社員をこき使って対応しよう」という方向に向かう
- 結果として正社員の長時間労働状態が発生する
- くわえて長時間労働を正当化するため、長時間労働そのものが評価されるような職場の雰囲気が生み出される
- 当然生産性は低い
- このような日本の労働環境について、「効率的に非効率なことをしている」と著者たちは述べる
- 一方長時間労働について、数少ないながらもメリットがないわけではない
- 例えば、絶えず変わる労働需要量に対応しながら正規雇用者社員の雇用の維持が図れる事実がある。日本の失業率は他国に比べて低い
- ただ、この「8.」の事実は正社員への優遇につながり、結果として非正規社員の格差を生み出している
「1.正社員を雇ったり教育することへのコストがかかる」については、
同様の旨を、労働法学者の濱口桂一郎氏や教育社会学者の本田由紀氏も指摘している。
【関連】
5.正社員の労働時間増加と、パートなど非正規雇用者での労働時間減少。すなわち「労働時間の二極化」の発生
出典:NTTコムリサーチ
6.ここ15年、日本の労働コストは下がり続けた
上のグラフは共に1999年に比べての労働コストの昇降を示したもの。上の折れ線グラフは2011年まで、下の棒グラフは2007年までをそれぞれ示している。
上のグラフでは一番下の水色の線、下のグラフでは左側に向いているのがそれぞれ日本を指している。見てわかるとおり他の国が労働コストが上がる中、日本はただ一国、労働コストが下がり続けているのがわかる。
小泉首相時代のいざなみ景気(2002年-2008年)における、「実感なき景気回復」がよく実感できる。
出典:OECD「Productivity and ULC By Main Economic Activity」
7.正社員の年間労働時間はここ20年間減っていない
日本人の統計上の一人当たり年間労働総時間の減少(左図)はパートタイム労働者の増加によるもので、正規労働者の労働時間はここ20年であまり変わっていない。
出典: 内閣府 規制改革会議 配布資料
8.ここ25年ほどで非正規労働者の比率が倍増した
労働者のうち25-34歳では4分の1が、16-24歳にいたっては半分近くが非正規労働者である。
出典:神林 龍「若年者の雇用の実態と効果的な対応策に関する研究会 第5回会合」の配布資料
9.今や女性の2人に1人は、初就職が非正規雇用
出典:週刊東洋経済 2015年10/17号
10.中年フリーターの数は250万人を越えた
出典:週刊東洋経済 2015年10/17号
とくに派遣業務の原則自由化が可能になった1999年以降の増加が目覚ましい。
(ここでの「中年」とは35歳から54歳までの非正規雇用の職員・従業員のことを指す。既婚女性は除く。)