旧約聖書「出エジプト記」が「旅行本」扱いになるTSUTAYA図書館…
レンタル大手「TSUTAYA」を展開するカルチャ・コンビニエンス・クラブ(CCC)が指定管理者となって1日にオープンした神奈川県海老名市立中央図書館が早くも問題多々発生、紛糾状態となっているようです。
TSUTAYAが参画する図書館は佐賀県武雄市の武雄市図書館に続いて2館目。2年前オープンした武雄市図書館では、関連会社から古い実用書が大量納入されるなど「TSUTAYAの在庫処分か」と思わせるほどの不明確・不透明な選書や、地元郷土資料の大量破棄など多数の問題が発生、現在も問題は続いたままです。そんな最中での海老名市立図書館オープンでした。
ここがヘンだよ!海老名市立図書館
1.本の分類がおかしい
・日本十進分類法を捨てた大胆かつ大雑把な分類
鉄道本コーナーはどこなんだ分かりにくいだろNDCで分けろ pic.twitter.com/ZPP7eTdZbO
— マロン◆2日目西む-14b委託 (@maroncarpbaka) October 2, 2015
(※NDC・・・日本十進分類法のこと。「100:哲学」「410:数学」「910:日本文学」などなど、図書館でよく見かける、本が分類されているアレ)
海老名市立図書館では、武雄市図書館に引き続き、書架分類において通常利用される日本十進分類法を不使用。緻密な十進分類を捨て、ツタヤ独自の大雑把な29種分類にし、加えて書籍のタイトルを通常のTSUTAYAの書籍コーナーと同じく機械的に判別(こちらは確定情報ではなく推測)した結果、本のジャンル分けがカオス状態に。
「地名が付いた本→旅行本」「署名に”寺”がついた本→寺社本」「書名に鉄道会社→鉄道本」などと、利用者にとってかなり不便な状態となっているようです。
・ジャンル分けがおかしい本の一覧(一部)
ほか、夏目房之介の『マンガと「戦争」』がコミック扱いとか、松尾芭蕉四方田 犬彦の『漫画原論』がコミック扱いとか『永仁の壺 偽作の顚末』が趣味実用扱いとか、その他にもいろいろありますが、あまりにも多すぎてキャプチャー作業が終わらないので断念しました。
・上下巻の区別が全くない
・国分寺(東京の地名)の資料が寺社のコーナーに
さてこれだけ本の分類がオカシイとなると、頼りは検索機となるわけですが、それもどうもマッドネスなご様子。
検索機は本棚に埋め込んだタッチパネル形式のもの。まず、トップメニューに、図書館蔵書と1階のTSUTAYA書店の在庫の検索が同じ大きさで表示されている(ここは“本屋も附属する図書館”であり“図書館の附属する本屋”ではないはずだが)。
そこで蔵書を検索すると、「どこにその本があるよ」というディスプレイ表示が出るが、この表示がわかりにくい。
検索機には印刷機能があるので、感熱紙のプリントアウトを出して、本を探すことになる。ところがこれもまた非常にわかりにくい。引用元:「TSUTAYA管理の海老名市立中央図書館を観察してきた」松浦晋也のL/D
2.本の配置の仕方がおかしい
・通路に本を置く
通路は図書館の陳列棚じゃない pic.twitter.com/2OAadrDbWQ
— マロン◆2日目西む-14b委託 (@maroncarpbaka) October 2, 2015
・使いやすさを考えてない置き方
手が届かない… pic.twitter.com/9UkqYqsyHY
— マロン◆2日目西む-14b委託 (@maroncarpbaka) October 2, 2015
3.1階の中央部にデカデカと位置するTSUTAYA&スターバックス
通常、図書館1階の中央部分には体躯が小さく体力の劣った幼児/少年少女のために児童図書コーナーが置かれるものですが、海老名市立図書館ではその場所にはツタヤとスターバックスが鎮座し、児童図書類は4階に追いやられています。こういうところから図書館に対するTSUTAYAの姿勢が何となく伝わってきますね。
そりゃまあTSUTAYAにとって何よりも重要なのは金儲けのはずで、だから「営利企業ツタヤの図書館なんだからツタヤが儲けるために一等地に鎮座するのも当たり前だろナニいってんだテメー」とでも言われたら何も言い返せませんが。
なお、今回の海老名市立図書館のリニューアルオープンには改修工事費として、長寿命化対策に8億円、新機能導入部分に2億円の計10億円がかかったそうです。
TSUTAYA図書館の先駆けである武雄市図書館の場合、市は改装費として7億5000万円のうち4億5000万を負担したのに比べて、海老名市の場合は工事費10億円を全額負担しています(海老名市市長定例記者会見資料「市立図書館指定管理者の候補者選定」海老名市教育指導課、2013年11月21日より)。
4.やはりおかしい購入本の傾向
・棚一面に並ぶ料理本
武雄市立図書館でも散々指摘されていましたが、海老名市立図書館も、どうも購入した本に偏りが見られるようです。
上の写真は実際に海老名市図書館に行かれた方が撮影した1枚。
また、別の海老名市民の方のブログでは次のように指摘されています。
27年度1万冊購入としていて、これまで8343冊購入しているが、購入した書籍名が明らかにされたが、武雄市と同様新古本、廃刊本が大部分を占めている。
8343冊の内訳
工学・工業分野(料理、建築関連等) 6500冊
自然分野(美術、健康等) 150冊
芸術分野 430冊
地理・歴史分野(旅行ガイド等) 1200冊
その他 63冊驚いたことに工学・工業分野(料理、建築関連等)6500冊の中身、料理本が4126冊、1991年から2000年代に発行された雑誌「スタジオ・ボイス」7冊、1976年から2009年に発行されたカルチャー雑誌、1992年から1998年に発行された雑誌「オリーブ」11冊、1982年に発行された女性雑誌、また、全集本でありながら歯抜けで購入。
さらに驚いたことには「アイミクロンメガネクロス」20件、「スピード・サラダ・オロシ」(おろし金)1650円、「シリコン製タジン鍋」、「サラダスライサー」、[フライパン]、「ドレッシングボトル」これらが購入されています。引用元:「速報 海老名市立 ツタヤ図書館の実態 飯田市議、ツタヤCCCの図書館経営実態暴露」ナムラーのブログ
引用元の「ナムラーのブログ」さんによれば、これら書籍の購入金額は「総予算2137万円、1冊あたり2137円」、さらには「問題のある物は購入しても書架には出さない、つまり買ってもお蔵入りにする」とのこと。当然のことながら、選書購入にかかる代金は税金から出されています。
参考文献
海老名市ホームページ
「TSUTAYA管理の海老名市立中央図書館を観察してきた」松浦晋也のL/D
「図書館危機」Dawn of the Horizon-はてなブログ
海老名市市長定例記者会見資料「市立図書館指定管理者の候補者選定」海老名市教育指導課
「速報 海老名市立 ツタヤ図書館の実態 飯田市議、ツタヤCCCの図書館経営実態暴露」ナムラーのブログ