日本では年収580万円で所得トップ10%、750万円でトップ5%、1270万円でトップ1%になる
1.所得上位10%の得た収入が、日本全体の所得40%を占める
先進国各国で格差の拡大が起きていることを実証的に示した『21世紀の資本』が世界中でベストセラーになったフランスの経済学者、トマ・ピケティ氏。
同氏は、日本の所得上位10%の得た収入が国民所得において占めるシェアが40%近くまで上昇していることを指摘、日本の格差拡大に警鐘を鳴らしています。
・所得トップ10%が国民所得において占めるシェア(日本)
出所:wid.world
グラフを見ればわかるとおり、日本においては所得上位10%のシェアは、戦後すぐは30%以下でした。これが1990年代以後上昇を見せ、そして2000年代に一気に増加し今に至ります。
2.日本で所得トップ10%の人は、どれほど所得を得ているか
では、トップ10%とは一体どれほどの所得を得ている人のことを指すのでしょうか。これについては、ピケティ氏のデータ作成にも携わった一橋大学の森口千晶教授が、興味深いデータを並べています。
それによれば、
・トップ10%とは年収580万円以上
・同じく5%が年収750万円以上
・そして上位1%が年収1270万円以上
・同様に上位0.1%は3200万円以上
・上位0.01%は8000万円以上
とのこと(いずれも2012年のデータ)。
表にすると次の通り。
・日本における所得階層別のシェア
所得上位0.01% | 8000万円以上 |
上位0.1% | 3200万円以上 |
上位1% | 1270万円以上 |
上位5% | 750万円以上 |
上位10% | 580万円以上 |
すなわち年収580万円以上あれば上位10%の所得になるということで、意外な額の低さに驚く方もいるかもしれません。
まあ個人的には年収160万円だとか130万円だとか、そういう仕事を何年もしてきたのであまり違和感がないのですが、しかし違和感がある方は、月給10万円とか12万円とかが普通に並んでいる田舎のハローワークにでも赴けば、より実態を把握でき、実感できるものではないでしょうか。
・アメリカではトップ1%は年収4000万円以上
なお大阪大学の大竹文雄教授によれば、これがアメリカの場合、トップ1%は年収約35万ドル(およそ4000万円)以上、トップ10%は同10.5万ドル(1200万円)、そしてトップ0.1%は333万ドル(3億8000万円)になるとのこと。
3.日本においては、年収300万円以下の所得者が全体の40%以上を占める
日本も格差社会が進行中とはよく言われるものですが、アメリカとはまた違った風景が見えているようで、所得上位が膨れ上がったアメリカと異なり、日本では非正規雇用の進行による下位所得者の没落が著しいものとなっています。
例えば、国税庁の「民間給与実態統計調査」によれば、給与所得者において年収300万円以下が40%以上を占めるものとなっています。
・年収300万円以下の給与所得者の割合(国税庁「民間給与実態統計調査」2014年より)
100万円以下:9.1%
100万円超~200万円以下:15.0%
200万円超~300万円以下:16.8%
計:40.9%
もちろんこれは、「年功賃金で若い人は給料が低く抑えられている」「税制の都合上あえて収入を抑えている兼業主婦パートの人も含まれている」わけで、必ずしもこの層の人すべてが貧しいというわけではありません。
しかしながら、年々確実にこの層の比率が増えているのが現状です。例えば15年前の1999年において、この層の比率は28%ほどでした。
・参考文献
国税庁「2014年民間給与実態統計調査」
国税庁「1999年民間給与実態統計調査」
大竹文雄、森口千晶『なぜ日本で格差をめぐる議論が盛り上がるのか』「中央公論」2015年4月号
大竹文雄「大竹文雄の経済脳を鍛える いくら以上の年収ならトップ1%?」日本経済研究センター、2015年3月13日
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