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NY州最低賃金1860円への引き上げと、クルーグマンの最賃上昇への見解

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東京・渋谷で行われたの最低賃金値上げデモ

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NY州、最賃を約1860円に値上げへ

昨日、各メディアで報じられていましたが、米ニューヨーク州が最低賃金の踏み上げを目指しているようです。

アメリカ・ニューヨーク州では、ファストフード店の最低賃金が現在より7割多い、時給15ドル、日本円で約1860円に引き上げられるとメディアが報じています。

23日付のニューヨーク・タイムズは、ニューヨーク州にある一定規模以上のファストフード店の最低賃金が時給15ドル、日本円で約1860円(1ドル=124円換算)に引き上げられると報じました。州の最低賃金は現在、8ドル75セントで、7割の賃上げになります。

テレビ朝日ニュース、2015年7月24日

クルーグマンが語る最低賃金値上げについて

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ポール・クルーグマン

さて最低賃金の上昇の際に必ずと言って語られる「最賃上昇と雇用の関係」ですが、弊サイトは2015年4月22日の記事(『マクドナルドが「時給1500円」でも日本は滅ばない』)において、カード教授とクールガー教授の社会実験を引き合いに「最低賃金の上昇が単純な雇用の減少を引き起こすことは限らない」ことを主張しましたが、最近、プリンストン大学に在籍するノーベル経済学賞受賞者であるクルーグマン教授が、コラムを執筆するニューヨークタイムズ(NYT)において同様の趣旨を述べていたので紹介します。

クルーグマン氏のNYTの2015年7月17日のコラム、タイトル『Liberals and Wages』より

Meanwhile, our understanding of wage determination has been transformed by an intellectual revolution — that’s not too strong a word — brought on by a series of remarkable studies of what happens when governments change the minimum wage.

More than two decades ago the economists David Card and Alan Krueger realized that when an individual state raises its minimum wage rate, it in effect performs an experiment on the labor market. Better still, it’s an experiment that offers a natural control group: neighboring states that don’t raise their minimum wages. Mr. Card and Mr. Krueger applied their insight by looking at what happened to the fast-food sector — which is where the effects of the minimum wage should be most pronounced — after New Jersey hiked its minimum wage but Pennsylvania did not.

Until the Card-Krueger study, most economists, myself included, assumed that raising the minimum wage would have a clear negative effect on employment. But they found, if anything, a positive effect. Their result has since been confirmed using data from many episodes. There’s just no evidence that raising the minimum wage costs jobs, at least when the starting point is as low as it is in modern America.

一方、賃金決定に対しての我々の理解は、政府が最低賃金を変えると何が起こるかについての一連の素晴らしい研究によってもたらされた知的革命ーこれは言い過ぎではない-により、大幅な変化を迎えた。

20年以上前、経済学者のデービッド・カードとアラン・クルーガーは、州が最低賃金を引き上げると労働市場にどのような影響を与えるか実験で明らかにした。好ましいことに、実験では、隣接する州は最低賃金を上げないという自然なコントロールグループが提供されていた。カード氏とクルーガー氏は、ニュージャージー州が最低賃金を引き上げたが(隣の)ペンシルベニア州は上げなかった際に、ファーストフード業界―この業界は最低賃金の影響を最も受けやすい―で何が起こったかを見ることに彼らの洞察力を発揮した。

カード=クルーガーの研究まで、多くの経済学者たちはー私自身も含むのだがー、最低賃金を上げることは雇用に明確にマイナスの効果をもたらすと考えていたしかしながらカードとクルーガーは、むしろプラスの影響を発見した。それ以来、彼らの結果は、多くのエピソードのデータからも確認されている。最低賃金の上昇が仕事を奪うということに対する証拠は全くない。少なくとも、現代のアメリカのように最低賃金の(額の)出発点が低い国においては。

(15.7.25:追記)

「カード=クルーガーの社会実験」や「最低賃金と雇用の減少の関係」については、次の本にわかりやすく書かれています。

マンキュー マクロ経済学(第3版)1入門篇
N. グレゴリー・マンキュー
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