過去最高益となったソニー18年3月決算の”強さ”を分析。ROE・FCF・ROICなど
各マスコミですでに報じられている通り、ソニーの2017年度(2017年4月~2018年3月)決算は20年ぶりに最高益を記録。本業におけるもうけを示す「営業利益」は、実に7000億円を超えました。
特に好調なのがゲーム部門における「ネットワークサービス分野」。有料会員サービス「プレイステーション プラス」の加入者は全世界で3000万人を超え、デジタルダウンロード販売もきわめて好調。ネットワーク売上高は、ゲーム部門の売上高1兆9000億円の実に半分以上を占めるものとなっています。
ソニー各部門の数字に関する分析はまた今度に行なうものとして、さて今回は、ソニーの決算から明らかになった、各業績の指標について見ていくことにします。
・ソニー連結決算推移
ソニーの連結決算の推移は次の通り。
18年3月期 | 17年3月期 | 16年3月期 | |
損益計算書(PL) | |||
決算発表日 | 18年4月27日 | 17年4月28日 | 16年4月28日 |
売上高 | 8兆5439億8200万円 | 7兆6032億5000万円 | 8兆1057億1200万円 |
営業利益 | 7348億6000万円 | 2887億200万円 | 2941億9700万円 |
経常利益 | 6990億4900万円 | 2516億1900万円 | 3045億400万円 |
株主に帰属する当期純利益 | 4907億9400万円 | 732億8900万円 | 1477億9100万円 |
賃借対照表(BS) | |||
総資産 | 19兆655億3800万円 | 17兆6605億5600万円 | 16兆6733億9000万円 |
純資産 | 3兆6471億5700万円 | 3兆1354億2200万円 | 3兆1244億1000万円 |
有利子負債 | 1兆3450億6600万円 | 1兆1995億4100万円 | 8935億4500万円 |
キャッシュフロー(CF) | |||
営業CF | 1兆2549億8200万円 | 8092億6200万円 | 7490億8900万円 |
投資CF | △8227億9700万円 | △1兆2539億7300万円 | △1兆304億300万円 |
KPI | |||
売上高営業利益率 | 8.60% | 3.80% | 3.63% |
ROA | 2.67% | 0.43% | 0.91% |
ROE | 17.96% | 2.95% | 6.18% |
FCF(フリーキャッシュフロー) | 4327億7500万円 | -4447億1100万円 | -2813億1400万円 |
ROIC | 14.1% | 6.4% | 6.6% |
・各業績指標について
①:ROE(自己資本利益率):収益性が大幅に改善
2014年の「伊藤レポート」で広く知られるようになったROE。
2018年3月期におけるソニーのROEは「17.96%」と大幅に改善。伊藤レポートにおける目標値「8%」を、大幅に上回るものとなっています。ROE上昇の背景としては収益性の改善が大きく、収益性を示す指標である「売上高営業利益率」は、17年3月期の3.8%から8.60%へと大きく伸長しました。
ソニーは現在、「ブランデッド・ハードウェア」として、高品質・高付加価値モデルに絞ったハード戦略を行っていますが、その戦略が見事に奏功したようです。
・自己資本率(ROE)の年次推移
なお「ブランデッド・ハードウェア」事業の営業利益は、2018年3月期においては1300億円を越えました。
②:FCF(フリーキャッシュフロー):ここ数年は投資のターンだった
ここ数年のソニー連結キャッシュフローにおいては、2016年3月期、2017年3月期と2年連続で「FCF(フリーキャッシュフロー)」がマイナスとなっていました。
これは本業のもうけである営業キャッシュフローより、投資キャッシュフローのほうが額としては大きく、積極的に投資を行っていたことを意味します。
その「成長のタネ」が、大きく花開いたのが18年3月期決算だといえます。
・連結キャッシュフローの年次推移
③:ROIC(投下資本利益率):経営資源が適切に配分されている
投資対効果を示す指標である「ROIC(投下資本利益率)」も、大幅に改善され14.1%。
仮に営業利益(もうけ)が増えたとしても、投資効果が悪ければ、資源配分としてはよろしいことではありません。
しかしROICを見る限り、先述のブランデッド・ハードウエア事業が典型的なように、「どの事業に投資をおこなって、どの事業は投資を控えるのか」の事業ポートフォリオ戦略が、現在のソニーにおいては適切になされているといえそうです。
・ROIC(投下資本利益率)の年次推移