『FAR CRY 5』を読み解く。本作が海外で早くも賛否両論を呼んでいるのはなぜか?アメリカで多大な影響力を持つ、キリスト教福音派との関連性

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『FAR CRY 5』を読み解く。本作が海外で早くも賛否両論を呼んでいるのはなぜか?アメリカで多大な影響力を持つ、キリスト教福音派との関連性

・プロモーションビデオ

https://www.youtube.com/watch?v=va9WiVA7tpU

UBIソフトから発表された『FAR CRY 5』。ストーリーや登場人物の紹介に加え、早くも賛否両論を呼んでいる本作の背景を、公開された情報を元に推測してみます

・『FAR CRY 5』のストーリー

アメリカ北西部、カナダとの国境沿いに位置するモンタナ州。かつてネイティブアメリカン(旧称:インディアン)居住地だったこの州は、過去インディアンと白人との歴史的な抗争が繰り広げられたことで知られているが、今はのどかな地域として知られている。

そんなモンタナ州の街、ホープ郡の連邦保安官局で郡保安官代理を担う主人公だが、国家の崩壊から人びとを救うため選ばれたと称する新興宗教「エデンズ・ゲート」の指導者・ヨセフと対峙していくことになる…。

・登場人物

【主人公サイドの人物】

主人公の仲間、または協力者になりうる人物

・主人公:架空の郡モンタナ州ホープ郡の連邦保安官局にて、郡保安官代理を務める

・ジェローム牧師:ヨセフら「エデンズ・ゲート」から迫害を受ける牧師

・マリア・メイ:父親を「エデンズ・ゲート」に殺されている

画像引用元:Wikipedia

赤い場所がモンタナ州。モンタナ州はカナダとの国境沿い、北部の州。

【新興宗教サイドの人物】

・ヨセフ:新興宗教「エデンズ・ゲート」の指導者。名前はおそらく、旧約聖書において登場する、エジプトを飢饉から救った人物ヨセフが元ネタ

・ヤコブ:ヨセフの弟。同じくキリスト教でおなじみイエスの12使徒ヤコブが元ネタ

・ヨハネ:ヨセフの弟。同・イエスの12使徒ヨハネが元ネタ

・フェイス:”フェイス”は日本語で「信仰」の意。ヨセフとは片親が異なる姉妹

・キービジュアルや舞台設定からうかがえる、『FARCRY 5』の元ネタ、アメリカの社会・文化背景

キービジュアル

ここからは、公開されたキービュアル等の情報から『FARCRY 5』について考えることにします。とはいえまだ公開されている情報が少ないため、推測が多くなってしまうのはあらかじめお断りしておきます。

さてキービジュアルが一目見てレオナルド・ダ・ヴィンチの有名な宗教画『最後の晩餐』をモチーフとしていることからもわかるように、本作においては、そこかしこに現実社会からの引用や元ネタを見て取ることができます。

レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』

・キービジュアルに見える、アメリカで多大な影響力を持つ「キリスト教福音派」との関係

それは例えばトム・クルーズも入信している(色々と悪名高い)新興宗教・サイエントロジーを思わせる色の教会や、同サイエントロジーのシンボルらしきものが星の代わりになっているアメリカの国旗(星条旗)などがそう。

青がモチーフのサイエントロジーと同宗教のシンボルマーク

さらに注目したいのが中央に描かれた人物たち。

イメージ中央部に陣取る彼らとその周辺にある「瓶ビール」「銃」「格子模様のフランネルシャツ」「伸ばし切った無精ヒゲ」などは、ゲームが舞台とする北部の人の身に着けるものや身体的特徴というよりは、むしろアメリカ南部に住む「レッドネック※1」と呼ばれている人たちの典型的なそれ。

そして中央の人物は、信心深いレッドネックの人たちが信奉し、現在アメリカ人の40%ほどが入信しているといわれ、アメリカの宗派で最大勢力※2である「キリスト教福音派」の牧師※3のように見えます。

(※1:レッドネックとはアメリカ中南部~南部に多く居住する、貧乏な人たちを指す言葉。工業化が遅れた南部では、元々からブルーワーカーで貧困に苦しむ人が多い。その人たちは保湿性が優れ動きやすく作業がしやすいフランネルシャツを好み、労働者の飲み物の代名詞である瓶ビールを愛飲する。また仕事の性質上、ヒゲを整える必要はあまりない。)

(※2:アメリカはキリスト教だけでも実に多くの宗派があり、経済階層や人種ごとに信仰する宗派が異なると言われている)

(※3.:福音派の牧師はテレビやネット放送などでのわかりやすい”説法”をするのがその特徴だが、見た目でハッタリをかますため、やけに高級感ある装い・いでたちを示しているのがポイント)

フランネルシャツ

「キリスト教福音派」は、「キリスト教原理主義」「急進派」「根本主義」「ファンダメンタリスト」とも呼ばれますが、とかく1960年代以降、南部を中心に台頭したプロテスタントの一派です。

アメリカの通常のプロテスタントが、聖書の読解と解釈を中心としての、ある一定階層以上の知性を持つ人向け(本を読むには一定以上の知能が必要)で地味かつ禁欲主義的生活態度を撮ろうとするのに対し、福音派はショッピングモールや映画館を併設したような誰でも行きやすい場所、いわゆる「メガチャーチ」と呼ばれる数千人以上が収容できるデカい会場、そこでのロックコンサートのような派手でわかりやすい演出、説法というよりは信者の欲望を肯定する需要に即した”説教”、時にはネットやアメリカで人気のケーブルTVでの放送も活用してと、とかく商業主義に長けた、人々の需要をくみ取ることに徹した商業的な手法で人気を博している勢力です。

・メガチャーチの様子

https://www.youtube.com/watch?v=FCL2THRenp0

その人気ゆえ、福音派は現在のアメリカにおいて政治方面においても強い影響を及ぼしており、例えば80年代の共和党大統領レーガンや、2000年代の同大統領ブッシュの誕生において大きな役割を果たしたと言われています。

もちろんその影響力はかつてほどではないにしろ現在でも大きく、今回のトランプ大統領の誕生にも大きな役割を果たしました。

そんな福音派は、教義においては頑迷なまでな保守性を保持しており(だから原理主義と呼ばれる)、それは例えば「宗教の教義の絶対なる肯定とそこからの進化論の否定、科学教育の否定」「堕胎・避妊の否定」「同性愛の否定」などといった点に見られます。

科学教育を否定することは、現代世界においてはどう考えてもマイナスの面が強く、例えば、小中の学力テストの世界各国比較においてアメリカは毎回先進国で最下層に位置するのですが、これなどは科学教育を否定する福音派の影響が大きいと言われています。すなわち、科学大国のアメリカと言っても、実情は小中高の教育が崩壊している中で大学レベル以上において優秀な移民を補うことで成り立っていた(だからアメリカの大学は奨学金が充実している)わけですが、さてトランプ大統領はこれら優秀な移民=技能移民の受け入れを制限すると公約しています。いやはや科学大国アメリカは一体どうなるのでしょうか。

とはいえ、これなどは次の紹介するものに比べれば些細なものかもしれません。福音派のクレイジーさの最たるものとしてあげられるのが「終末論に基づく第三次世界大戦待望と、そのためのイスラエル支援」です。

これは例えば『核戦争を待望する人びと―聖書根本主義派潜入記』という、福音派に入信したジャーナリストによるノンフィクション本に詳しく書かれていますけど、福音派などキリスト教右派が異教徒のユダヤ人・イスラエルを支援するのは、何もユダヤ人の受難の歴史に対して同情心を持つからではなく、イスラエルを支援することで中東情勢を不安定化させ、結果、新約聖書ヨハネの黙示録に書かれている「ハルマゲドン(最終戦争)」、具体的には人類を絶滅させるための第3次世界大戦を引き起こしたいからだとされています

昔、ハルマゲドンを起こそうと地下鉄でテロを行った宗教集団が日本にいたのはおなじみですが、アメリカには、もっと権力側に近い位置に似たような集団がいるわけですね…。

当然のことながら、人類を絶滅させるとなると自分たちも死んでしまうのではないか、というごく普通の疑問が浮かびますが、これは福音派の人びとによれば「戦争で人類が滅ぼされる前に、福音派のわれわれは神に召され、また再びこの地に戻ってくるため問題ない」となっています。さすがに進化論を否定するような人たちですから、まともな話を求めてはいけないものですが、これを大統領の宗教顧問を務めるような影響力の大きな人物(ジェリー・ファルエル)らが公言するのだから、いやはや恐ろしいものであります。

・本作が「Controversial(議論の的となる・物議をかもす)な作品」と呼ばれているのはなぜか?

ここまでくると、フランス・UBIソフトが届ける『FARCRY 5』は、フランスから送られた(製作はカナダにあるUBIソフト・モントリオールだけど)、「新興宗教」という特殊なテーマにしているようでその実、過去から現在に至るまで歪な宗教的動機によって愚かな行動を行ってきた「アメリカ」一般そのものへの多大なる皮肉が込められた作品のように見えます

要するに、アメリカを思いきり馬鹿にしているわけですね。

これは映画などで良くある典型的な手法であり、すなわち先進国ではあるけれど「(歴史家ウォーラ―ステインが言うところの)覇権国家」では無い、フランスやカナダ、ドイツといった先進国がアメリカをまなざした作品を製作する場合、アメリカという大国の暗黒面を強調することが多いように思われます。

よって海外ではカンの良いユーザーがこれらのことになんとなく気づいているようで、そのため『FARCRY 5』は早くもショッキングなトピックとなって賛否両論を呼び、controvercial(議論を呼びそう)な作品とアチコチで言われています。

例えばトランプ支持者が多いと言われている海外匿名掲示板の「4Chan」や「reddit」、またいわゆる「INFOWARS」などフェイクニュースサイトや果ては海外ユーチューバーの動画を見ると「このゲームはモチロン、UBIソフトのゲームはもう買わねえ」だとか「白人を邪悪に描いている。このクソ野郎」だとかのさまざまな言葉が並んでいます。

UBIソフトがどのような意図をもって本作を製作したのかは定かではないですが、しばらくの間、様々な論争を呼ぶのは確かでしょう。

同社渾身の大作『FAR CRY 5』は、PlayStation 4・PC・Xbox Oneをプラットフォームに、海外では2018年2月27日、日本では2018年春に発売予定となっています。

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